Kikuchi Kanagata (Thailand) Co., Ltd. 様
3DTascalX導入で作業時間を約40%削減 業務効率化が生産性向上を後押ししました
<企業紹介>
長野県南佐久郡に本社を構える金型メーカー・株式会社菊池金型は、2007年11月にタイに新たな拠点を設立しました。日本本社と同等の品質を維持するため、タイ工場ではさまざまな取り組みを進めています。その一つが、3Dビューアソフト「3DTascalX」の導入です。このビューアの活用により、作業時間を従来の半分に短縮。作業効率が飛躍的に向上しました。こうしたタイ工場での取り組みを牽引する岡村圭悟氏に、3DTascalX導入の背景やその成果についてお話を伺いました。
御社が担う業務内容について教えてください
当社は、主にダイカスト金型およびそれに関連する治具の設計・製作・販売を一貫して手掛けています。また、CAD/CAMシステムの増設や3次元CADシステムの導入など、積極的な設備投資を進め、2007年にはタイに新たな生産拠点を設けました。
現在、タイ工場には日本人駐在員を含む41名のスタッフが在籍しています。業務の比率は年によって若干の変動がありますが、おおよそ80%が自動車関連の部品です。とはいえ、タイ国内の自動車市場は飽和状態にあり、景気後退に伴う金融機関の慎重な貸出姿勢も相まって、自動車販売台数の伸び悩みに拍車をかけています。さらに、簡易な金型を製作するメーカーが増えたことで、価格競争も激化している状況です。このような市場環境の変化は、当社にも少なからず影響を与えています。
Kikuchi Kanagata (Thailand) Co., Ltd.
岡村 圭悟 氏
厳しい市場関係の中で、タイ工場ではどのような取り組みをされていますか?
価格競争に巻き込まれないよう、他社との差別化に注力しています。その一環として、形状や機構が複雑で高難度な金型の製作という技術力を要する分野に取り組んでいます。また、日本本社と密に情報を共有し、蓄積されたノウハウを活用。お客様のご要望に応じた最適な提案を行うことで、競争優位性を確立しています。
一方で、こうした取り組みの過程で課題も見えてきました。たとえば、EDM(Electrical Discharge Machining:放電加工)の担当者が設計データ全体を把握しようとしたり、「この電極の向きはどうするべきか」といった疑問が生じたりするたびに、CAM担当者の元へ足を運び、3Dデータを確認する必要がありました。この非効率なプロセスが、時間的ロスを生む要因となっていたのです。
「3DTascalX」をどのように知りましたか? また導入の決め手を教えてください
EDMの作業効率化を目指して高機能ビューアの導入を検討していた際に、代理店から紹介を受けたのが「3DTascalX」です。一口にビューアといっても種類はさまざまで、測定や閲覧だけであれば無償のビューアでも対応可能です。しかし、当社が求めるのはそれだけではありません。形状を読み取り、その座標値や寸法を出す「面操作」の機能は業務に必須であり、絶対に外せない条件でした。
「3DTascalX」は、この条件を満たし、一般的なビューア以上でありCAD未満という絶妙な機能性を持ち合わせています。さらに、コストパフォーマンスにも優れ、スペックの低いパソコンでも動作する安定性やIGES・STEPデータへの変換機能も備えており、これらが導入の決め手となりました。
「3DTascalX」の導入により、どのような効果が出ましたか?
最大の効果は、EDM部署内で作業を完結できるようになったことです。これにより、作業を中断して3Dデータを確認しに行く必要がなくなり、業務時間をざっくり半分程度に短縮できたと感じています。当然ながら、問い合わせ対応をしていたCAM担当者の負担も軽減され、結果的に工場全体の作業効率が大幅に向上しました。
また、現地スタッフによる操作習得に時間がかかるのではないかという懸念もありましたが、これは杞憂に終わりました。トレーナーの派遣や直感的に操作できるインターフェイスのおかげで、短期間で習得が可能になったからです。教育コストの削減や迅速な導入といった思いがけない効果も生まれ、現場のスムーズな運用につながりました。
3DTascalX を使用する
Ms.Natacha Dokmai 氏
他社との差別化という観点での効果はありましたか?
EDMに使用する電極には銅やカーボンなどさまざまな素材が用いられるため、これらを適切に使い分けることが求められます。そこで、電極を自動で交換できるATC(Automatic Tool Changer)を導入し、加工効率を大幅に向上させるとともに長時間稼働を可能にしました。
とはいえ、加工量に応じて条件が変化するため、その都度EDMの調節が必要です。このプロセスを効率的に進めるには、3Dデータを活用できる環境整備が欠かせません。当社では「3DTascalX」を活用することで、精度とスピードを両立した効率化を実現しています。タイ国内では、EDMにATCを導入している金型メーカーは当社以外に見当たらず、この点が差別化要因となっています。
最後に、今後の展望について教えてください
お客様と上流工程から伴走することを目指しています。金型を起こす前段階からご要望を丁寧に伺い、「このような問題が発生する可能性があります」や「安定した鋳造を実現するためには、この方法が効果的です」といった具体的な提案を行うことで、量産化を支援していきたいと考えています。これまで培ってきたノウハウと技術力を最大限に活用し、お客様に寄り添った最適なソリューションを提供すべく尽力する所存です。