[ English page ]
CASE
神奈川県秦野市に本社を置く自動車部品メーカーの株式会社海津工業所(以降、海津工業所)は、紙図面の時代に実現していたコンカレントエンジニアリングを、ペーパーレス化された環境でも継承するために3DTascalXを導入。受注と同時に、金型モデリング、治具設計、レーザー加工機の穴あけデータ作りなどを一気に進める体制を実現して、設計変更への迅速な対応や試作部品の納期短縮に成功した。
海津工業所は、試作から量産まで一貫した生産体制を自社で保有する、独立系の自動車部品メーカーである。
部品の設計データさえ提供していただければ、試作から、量産用金型のモデリング、プレス・板金、レーザー加工、溶接、ハンドワークの調整といった工程をすべてお任せいただき、サブアッセンブリ部品を仕上げて納品します」と、取締役工場長の金澤正敏氏は紹介する。そして、全工程を社内で迅速に一貫作業できる海津工業所だからこそ、各部門での3次元ビューイングが必要になったのだ。
「従来は、営業部門は受注するとすぐに、客先から受け取った紙図面を必要な部門へ一気に渡していました。みんなが連携して、金型モデリング、治具設計、レーザー加工機の穴あけデータ作りなどを同時に 行ってきたからこそ、短納期・高品質を達成してきたのです」と金澤氏 は語る。
しかし、2000年から2002年ごろにかけて、自動車メーカーの設計部門はペーパーレスが一気に進んだ。その結果、穴あけ、溶接などの加工指示は、紙の図面ではなく、CADの属性・注釈情報としてデータ提供されるようになった。
海津工業所では、金型設計には3次元CAD/CAM「Space-E」、治具設計などには3次元CADシステム「TOPsolid」を利用している。そして、自動車メーカーから提供される各種CADデータやIGESデータを、Space-EやTOPsolidデータへトランスレートしているのが工機部CAD係である。2003年ごろから、CAD係の人たちは、3次元CADデータから2D図面を作成して、社内へ提供するという新たな役目も担うことになった。
「当社のCAD係には、Space-EとTOPsolidに精通したCADオペレータが当時は4名ほどいましたが、自動車メーカーの部品設計者と同じCADをすべてそろえると、CADオペレータの人数を2倍にして、マシン環境も格段に強化しなければいけないと思っていました」と、生産 部工機課CAD係係長の尾上伸和氏は言う。この非効率な投資を避けて、しかも、紙と同じ迅速なコンカレントエンジニアリングを実行するために不可欠となったのが、3DTascalXだった。
海津工業所は、5万円以下の製品から数百万円の製品まで、幅広く3次元CAD製品を比較検討した。その結果、選定したのが、3DTascalXである。
第1に、I-DEASの中間ファイルであるIDIデータを、属性・注釈データを含めて高精度で取り込み、しかも単にIDIデータを見るだけでなく、トランスレートして他のアプリケーションで利用できるのは3DTascalXだけであった。
第2に、IGESデータの変換機能も、群を抜いて優れていた。「IGESデータの変換精度が高く、読み込みスピードがとても速い。また、さまざまな自動車メーカーのニーズに対応していくには、IGESデータをいかに効率よく扱っていくかが焦点となりますから、逆方向に、3DTascalX側からIGESデータ出力ができるのも大きな魅力でした」と尾上氏は言う。
第3に、操作性が良い。営業、製作現場、検査部門、生産管理などの間接部門まで、あらゆる部門で「紙と同じ感覚」で同時に使わなければ、コンカレントエンジニアリングは継承できない。そこで、誰でもすぐに使えるかどうかを入念にチェックした。
第4のポイントは、モデル情報を比較して、正確な情報伝達ができることである。干渉の表現がわかりやすいし、板厚のどちらの面を示しているかなどもひと目でわかる。変更点をカラー表示する機能も大変に便利だ。「特に試作は何回も作り直すものですから、新旧比較が正確にできるのは大切なポイントです。設計変更で、前回にはあった穴がなくなったといったときも、変更箇所をカラー表示して作業指示書と一緒に現場へ渡すので、間違いが起こらなくなりました。形状比較ができる3次元CAD製品はなかなかありませんから、大変に助かっています」と尾上氏は語る。
海津工業所では現在、3DTascalXを6セット利用している。
まず営業部門では、発注元から提供されるCADデータを見て、受注決定を判断し、見積りなどを作成したうえで、作業指示書を作成して必要 な部門へ一気に配信する。
作業指示書は、提供されたCADデータを3DTascalXに取り込み、陰線表示機能を使って簡易図を表示させたうえで、その画像をExcel にコピーするなどの作業で簡単に作成できる。
CAD係では、製品モデリング、金型モデリング、加工指示書作成、検査指示書作成、治具の開発設計を行い、その他の部署でもレーザー加工機のモデルデータ作成、検査指示書の作成を行うなど、ほぼすべての仕事で3DTascalXを活用している。
「何の作業をするときも、手軽かつ正確に形状を確認できるのが3DTascalXの良いところ。IGESでもらったデータを、ダイレクトにSpace-EやTOPsolidへ取り込むときも、データが抜け落ちることなく変換できたかどうかを3DTascalXで確認するのが標準の作業手順になっています。治具設計や加工データ生成をするときにも、必ず3DTascalX上で形状チェックをしてから、次の作業に進むようにしています」と尾上氏は言う。
加工指示書としては、主に穴径図と溶接指示書を作っている。「IGESデータやIDIデータを3DTascalXに読み込み、穴径を計測して図面化していますが、一連の作業が大変にスムーズ。いろいろな方向の面があるときでも、3DTascalXなら測りたいところがすぐに測れて、記入したいところに寸法を表記できます」と尾上氏は評価する。
3DTascalXは、印刷品質が優れているのも特長である。たとえば、 引き出し線の太さや位置のバランスが見やすくチューニングされてい るなど、画面表示とはまた別に、印刷したときの見やすさに対してもき め細かい配慮が行き届いている。
3DTascalXの導入効果は、最小限の設備増強でペーパー図面レスに対応することができたことである。「試作で一番大事なのは品質と納期。組織間連携でみんなが一気に取り組み、何十もの部品をいっぺんに作らなければなりません。その流れを阻害することなくスムーズに支え、さらに加速してくれたのが3DTascalXでした」と金澤氏は強調する。
CADオペレータがそれぞれの部門で必要な情報を整理するという工程をはさむことなく、営業部門が受注したら、全部門が一気に仕掛かりを開始できるようになった。これに加えて、わかりやすい加工指示書の作成や干渉チェックの実施によって、伝達ミスのない正確な作業がで きるようになって、現場作業も加速された。
次の目標は、加工指示書のペーパーレス化である。すでに、工場内のオフィススペースでは、型や治具の形状を確認するために3DTascalXを使っている。さらに、作業現場にもパソコンを置いて、必要な人が必要なときにいつでも3DTascalXの画面を見られるようにして、穴径図や溶接指示書の紙出力をなくそうと考えている。
「加工指示書のペーパーレス化は、設計変更への対応を一段とスピードアップするために不可欠な要素ですから、競争力を高めるためにも、できるだけ早期に実現します」と金澤氏は意欲的である。
フォームが表示されるまでしばらくお待ち下さい。
恐れ入りますが、しばらくお待ちいただいてもフォームが表示されない場合は、こちらまでお問い合わせください。