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CASE
自動車用内装部品等を製作している共伸プラスチック株式会社(以降、共伸プラスチック)は、客先からハイエンド3次元のCADの設計データを受け取り、見積りを作成し、金型業者へ製作指示をする一連の業務を支援するツールとして、3DTascalXを活用している。断面切り、肉厚測定、高精度な体積計算などの機能を駆使して、正確な見積りをスピーディに作成。利益を確保しつつ、受注を獲得しやすい体制を確立することに成功した。
埼玉県飯能市に本社を置く、プラスチック部品メーカーの共伸プラスチック。自動車内装のインパネ周辺部品を中心に、射出成形、バイブレーション溶着、塗装、組立検査に至る一貫生産体制を確立している。また、大型・複雑形状に適した「RIM成形」についても福島県に専用工場を設けて独自技術を蓄積しており、農業機械・建設機械・産業機械の部品を製造している。
「多品種小量から大量生産までフレキシブルに対応できることに加えて、『共伸プラスチックでないとできないもの』を作ることにこだわっています」と、飯能工場 取締役工場長 兼 営業技術部部長の山本雅人氏は紹介する。
たとえば、溶解樹脂の流れの合わせ目に発生するウェルドラインを、生産設備の追加投資を行わずになくす工夫を施して、自動車外装に取り付ける部品の滑らかな曲面を作り上げることに成功するなど、技術力とノウハウの深さは業界から高く評価されている。
自動車業界は早くから3次元設計が進んできた。共伸プラスチックも1990年代からCATIA V4を導入して、客先からの3次元データ提供に対応していた。しかし、次に登場したCATIA V5は、CATIA V4とはアーキテクチャが根本的に異なっていたり、導入や維持管理の費用、使用出来る人が限られるなどの課題があった。
「当社はもともと、CATIAのフル機能が必要なわけではありません。セールスエンジニアが使いやすく、その業務を1製品で一貫して支援できれば、むしろ新しい仕事の流れを作れて有利だと考えたのです」と山本氏は言う。共伸プラスチックでは、営業技術部のセールスエンジニアが、客先打ち合わせ、見積り作成、量産用金型製作指示までを一貫して担当する。営業/営業技術/生産技術と組織が分かれることなく、同じ担当者が顧客との接点をワンストップで担うため、顧客ニーズを的確に反映した量産立ち上げをスピーディに行えるのである。
同社の強みともなっているこの「セールスエンジニアのワンストップの動き」を、トータル支援できるのが3DTascalXであった。「営業プロセスで不可欠な作業としては、断面切り、肉厚測定、高精度な体積計算の3つが挙げられます。3DTascalXは、これらが非常 に簡単にできて、セールスエンジニアが『使いやすい』と感じるツールでした」と山本氏。
さらに、営業部営業技術二課の塩田哲也氏は、「通常のビューワ製品では、『抜き方向基準での断面が切れない、断面上で寸法が測り にくい、任意で座標軸の設定ができない』ので、完全に力不足。3DTascalXは、3次元データを見るだけでなく、新しい情報を付加することもできる『3次元ハンドリングツール』だからこそ、当社の営業プロセスでやりたいことがすべてでき、CATIA無しでも不便や我慢を生じさせることがありません」と語る。
しかも、導入にかかるコストは、CATIA V5の「数分の1」の安さである。
2006年、共伸プラスチックは、3DTascalXを3ライセンス導入した。「客先から提供される設計データを使って、体積、重量を高精度で計算できるため、正確な見積りを速く出せます。これが営業の力となるのです」と山本氏。スピーディかつ正確な見積りは、利益を確保しつつ、競合他社との競争に打ち勝って受注を獲得するうえでの強い味方だ。また、精度の高い見積りを出せば、仕事完了時に客先から信頼感を獲得でき、長期的な関係を築いていくうえでも役に立つ。
見積りをするにあたって、セールスエンジニアは3DTascalXを使って製品(ワーク)の重量、寸法(縦・横・深さ)、製品抜き方向を把握し最適な設備の設定を行う。この際、寸法は製品抜き方向での把握が必要となるため、3DTascalX のローカル座標機能は不可欠だ。「3DTascalXで投影面積を測定して、付帯設備に何を使うかを慎重に判断する場合もあります。複雑な形状のときに、投影面積は便利な機能です」と塩田氏。任意の箇所で断面を切る機能は、アンダーカット処理に不可欠だ。金型を開いたときに製品(ワーク)を取り出すことができないのがアンダーカットだが、3次元画像では把握しにくい。ところが抜き方向で断面を切ると、アンダーカットがすぐにわかる。
「お客様から設計データをもらってから、生産にあたっての懸念事項をすべてつぶしたうえで見積りを作成する。この作業全体で3DTascalXは実に使いやすい」と山本氏。見積り作成にあたっては、客先への提案も積極的に行う。「3DTascalXのローカル座標と距離計測の機能を組み合わせれば、抜き方向の肉厚を測れるのも便利です。肉厚の差が大きいところはヒケ(収縮によるへこみ)が発生しやすいので、きちんとチェックして、何らかの対策を講じておく必要があります」と塩田氏。
現在では、設計データを受け取ってから短時間で問題点を把握できるため、材料変更や設計変更などの提案を、図に示しながら具体的に行えるのである。
金型業者とのコミュニケーションにも3DTascalXは重要な役割を果たしている。まず、CATIAを持っていない金型業者へは、提供するデータをIGESやDXF形式などに変換するが、3DTascalXはCATIAデータからの変換が高精度で行える。「客先から設計変更の指示があれば、3DTascalXで色分け表示して変更箇所を確認します。また、建設機械などの部品データはIGESで提供されることが多いのですが」と塩田氏は言う。
さらに金型業者へ作業指示するために、作成するのが2次元図である。3次元画像の任意の部分をマウスのドラッグ&ドロップ操作でコピーし、Excelに貼り付け、寸法や製作上の注意事項などを書き込む。断面図 を添えることも多い。
「お客様との打ち合わせ時に、『ここが設計のポイントなので、十分に注意してほしい』という説明があれば、 2次元図でその部分を大きな赤丸で囲んで注意書きすることで、確実な情報伝達ができます。3次元と2次元を目的に応じて柔軟に組み合わせることで、金型業者への情報伝達を少ない工数で的確に行えるようになりました」と山本氏は語る。
利用を重ねるにつれて、3DTascalXの位置づけは少し変わってきた。
導入目的は、高価なハイエンド3次元CADを導入するよりも低いコストで、必要な業務をカバーすることだ。その後、使いこなすにつれて、3 次元と2次元の世界を柔軟に行き来しながらデータ・ハンドリングの自由度を高める効果がクローズアップされてきた。
客先でCATIAの大容量データを受け取るときも、3DTascalXへ取り込むだけで、モバイルPCで持ち帰れるようになる。 「お客様にIGES変換の手間をかけさせることなく、気持ちよくCATIAの生データを渡していただけます。CATIAを所有することなく、CATIAデータを自在に扱うことができるのです」と山本氏は言う。
3DTascalXを使えば、情報共有も容易になる。3次元画像をExcelに貼り付けて、指示事項を書き込み、メール添付することで、従来より 正確な見積りをすばやく金型業者からもらえるようになった。igsデータを受け取った金型業者が3次元CADでデータ修正を行って金型製作期間を短縮した例もある。「容量が非常に大きく、取り扱う環境づくりに苦労するハイエンド3次元CADのデータを、ものづくりの全工程でどのようにうまく取り扱っていくかは、自動車業界に限定することなく、製造業に共通する課題といえます」と山本氏は指摘する。
この問題の解決に新たな道を開き、「共伸プラスチックでなければできないものづくり」の追求をがっちりと下支えするのが、3DTascalXなのである。
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